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2002年2月のコラム
画像診断の話(その2)

  年も明け、1年で一番寒い季節になりました。今日は休みと言えど、外は寒いし、家に引きこもっていると、テレビもつまらない、雑誌もつまらない、で、ネットサーフィンでもとなってしまう方も多いのかもしれません。ブロードバンドが普及し、つなぎ放題があたりまえとなりつつある現在、私たちは氾濫する情報の波にもまれながら生活しているといっても過言ではないでしょう。必要な情報と不要な情報を区別し、その中で正しい情報とそうでない情報を判別していかなければ、逆に情報に翻弄される毎日が訪れてしまいます。リテラシーという耳慣れぬ言葉を知りました。氾濫する情報を如何に取捨選択し、うまく利用していくかという学問もしくは技術のことらしいのですが、それを、小学生の頃から教えようという動きがあるそうです。そうですよね。とんでもないHPもありますから。

  今月も先月に引き続き画像診断の話です。レントゲン線を用いた画像診断装置の話は先月にさせていただきました。今月はそれ以外の画像診断装置、ひとつは音波を用いた超音波断層診断装置=俗に言うエコーと、磁気を用いたMRIの話です。

  それではまずエコーの話です。エコーのそもそもの始まりは魚群探知機です。音波を発射しその反響をキャッチし魚の群れを探すという、漁業の革命。無論日本が最先端を走り、世界中に広まりました。今では深海100mのたった1匹の20kgの魚を捉えることができるのです。病院ではそんなマクロの音波探査ではなく、むしろミクロの音波探査がメインといっても良いでしょう。前回のCTが断層像であったように、エコー像も断層像ですが、CTが全体の断層の静止画であるのに対し、エコーは限られた部分のむしろ動画と考えることができます。
トランスデューサーと呼ばれるプローブを検査したい部分に密着させ、超音波を当てます。体内からはその超音波の反射が戻ってきます。それを画像に再構成する装置がエコー診断装置なのです。レントゲンとまったく違うのは、超音波は組織の音響抵抗でどんどん減衰するということと、組織の境界で反射しまた屈折するということです。それらから得られる画像は、大きくても半径15cmくらいの扇型のもしくは長方形のリアルタイムな画像です。従ってエコー検査が得意とする分野は、対象がひとつひとつの臓器組織に限定された音響境界が比較的はっきりとあるようなもの、すなわち、心臓、肝臓、腎臓、前立腺、子宮、膀胱、眼球、腫瘍塊などです。特に心エコー検査では、心臓の動き、弁膜の動き、各部の計測などで真価を発揮し、最近のカラードプラ装置を搭載したエコー機では、断面に直行する血液の流れを赤と青のカラーモザイクで表示することもできます。従って弁尖部での血液の逆流や動静脈短絡を直接描画することが可能になっています。等センターでも一昨年よりカラードプラエコー装置を導入し、心エコー検査はもとより様々な検査に役立てています。

  続いて、MRIの話です。この装置は強力な磁気を用いて水素原子の分布を受信し、画像に再構成するというもので、日本語では磁気共鳴装置と呼ばれます。得られる画像は比較的CT検査のそれと似ていますが、レントゲン線を利用するCTと比べ、臓器組織のデリケートな差異を表現することができます。例えば CTの得意とする頭蓋内検査においても、CTで描画できない脳腫瘍を発見できることもあります。つまり軟部組織の相対的なコントラストの表現においては MRIが最も優れた検査方法ということができます。反面、骨などの水分を余り含まない組織そのものや、動きのある臓器組織の描画は基本的には苦手で、肺結核、肺癌の健診ではモーションアーティファクトというブレのある画像となるため、CTに軍配が上がります。まだまだ獣医療の世界では日本に数台のMRIしか稼動していないため、身近な検査とはいえませんが、状況は徐々に改善されつつあります。西日本では三重県の南動物病院で1台、山口大学で1台が稼動しています。

   昔、自分が獣医学科の学生だったとき、臨床とは『風呂敷包みを手渡され、中身は何か風呂敷を解かずに知ろうとするようなもの。』と教わりました。『たたいてみる、揺すってみる、何をしてもかまわないけれど、壊しちゃいけない。』臨床に携わって20年を越える今でも、しみじみかみしめてしまう言葉です。

   年初2回にわたって画像診断の話をさせていただきましたが、ハイテクこそが今後のあるべき姿というわけでは決してありません。臨床の基本は十分な問診と完全な身体検査にあります。それが診察の80%を締める最も重要なことなのです。残る20%を如何に詰めるかのお話です。

   常に基本に忠実に。しっかり時間をかけて飼い主の方の話を聞き、動物の体を五感を最大限に利用して隅々まで精査する。この姿勢なくしてはハイテクな画像診断もその真価を十分には発揮できません。
  当センターに受診される際には、何でも話してください。そして、何でもお尋ねください。それが、診療の基本なのですから。

(文責:よしうち)
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